言葉に宿る
『ボク、大きくなったらメジャーリーガーになるんだ!』
その小さな手には余るくらいのボールを握りしめた男の子はチームメイトの前でいつもそう言います。
そんな時、他の親御さんの手前恥ずかしくなってしまうのか、その子のお母さんはついつい言ってしまうのです。
『いやだわ、そんな上手でもないし、一生懸命練習をするわけでもないし。夢ばかり大きくてお恥ずかしい』
そこへコーチがやってきました。
『お母さん、子どもが夢を語らなくてどうするんですか?野球をやってりゃメジャーに行きたい、サッカーやってりゃワールドカップに出たい。それでいいんですよ、カッコいい、ああなりたいって思えることがどんなに幸せか。それでもいつか子どもは必ず壁に当たるんです。自分より上手いヤツに出会ったり、上達できないと感じたり。そこで自分と向き合って悩んで考えるんです。それまでは「大好き」「たのしい」「おれってすごい」でいいじゃないですか。』
『それに、「うちの子は無理」なんて言ってると、本当にその言葉どおりになっちゃいますよ。ああは言っても子どもなりに上手くいかなくて悩んだりしてるんですから、お母さんくらい無条件で信じてあげなきゃ。』
そのお母さんはもちろん、周りにいたお母さんたちも大きく頷いたそうです。
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お母さんが発した言葉は、直接、そして雰囲気でも子どもに伝わります。 またお母さん自身が自分の言葉を一番身近で聴いているんですよね。
日本特有の謙遜の文化なのでしょうか。お母さんたちの世界の何気ない定型文のようなものでしょうか。
それでも「言霊」という言葉にもあるように、想いは言葉に宿ります。
他人の物差しではなく、自分がどう想っているのか…本当の想いを大切に言葉に乗せていきたいと思います。